長年、道場生活を営んできたM・Tの抑圧からの解放

今一度、N・Tはこちらに向き直った。
「それにしても、お前が急にあんな突拍子もない事を提案するとは思えないんだよな、俺は。何かあったろ」
 N・Tは勘が鋭かった。長年の付き合いともなると、お互いの魂胆まで見え透いてしまうこともある。
「俺もそう思う。もしやと思うけど、T・M絡みか?」
 また喋りはじめたかと思えばN・Tよりも洞察力の鋭いM・Tの一言に私は狼狽した。
「あいつか!おい、A・I!」
夜もすがら、昼間のテンションでN・Tが捲くし立てる。こうなるともう私は洗いざらい話すしかなかった。
「長年の居候生活で飽きたのもあるんだろうけど、とにかくココの飯は不味いんだって。デザートも出ないみたいだし。だからせめて食後ぐらいはと思って……」
 嫌々ルールに縛られ続けているM・Tが気の毒に思えたのは確かだが、生い立ちから何まで、一通り本人の境遇を知ってしまった手前、何かしら一役買って出ようという見栄が自分の中にあったのかもしれない。